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「迷惑はかけてなんぼ!」日本初アフリカ系学長サコ氏が語る日本の未来【前編】

アフリカ出身者として初めて日本の大学で学長になったマリ共和国生まれのウスビ・サコ京都精華大学長をご存じでしょうか?

 

マリ語、英語、フランス語、中国語、日本語を話せるマルチリンガルで、関西弁もペラペラ。学長という一見お堅そうな立場なのにも関わらず、「なんでやねん!」といった親しみやすい雰囲気で、メディアでも日本のおかしなところに愛のあるツッコミをいれられています。

 

そんなサコ学長がこの度、ほぼ同時期に2冊の本を出版されたということで、AYINAが取材をさせていただくことになりました!

 

アフリカ出身サコ学長、日本を語る(画像をクリックで購入ページへ)

「これからの世界」を生きる君に伝えたいこと(画像をクリックで購入ページへ)

 

AYINAメンバーにはサコ学長を知っていた人、本を読んでいた人、すでにファンだった人が多くいました。そのためこの取材が決まったときはLINEグループが大盛り上がりだったことをここに告白しておきます。

 

それでは、取材の模様をご覧ください!

 

プロフィール【ウスビ・サコ/Oussouby SACKO1966年、マリ共和国・首都バマコ生まれ。中国留学を経て91 年に来日し、99年に京都大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程を修了した。博士(工学)。その後京都精華大学人文学部教授などを経て、2018 4月同大学学長に就任。研究テーマは「居住空間」「京都の町家再生」「コミュニティ再生」「西アフリカの世界文化遺産(都市と建築)の保存・改修」など(「アフリカ出身サコ学長、日本を語る」より改変)

 

AYINAスタッフ一同
「本日はよろしくお願いします!!!」

お願いします〜
サコ学長
AYINA 土屋
今回はサコさんの本を読んだメンバーたちで取材させていただきます。内容を踏まえた上でいくつか質問させてください!

サコさん本を本人に見せびらかすAYINAメンバー

おおーありがとうございます。
サコ学長

日本の良さは受け入れる力

AYINA 原武
それでは私からはひとつ、最初に質問させていただきます。書籍のなかでは「日本のなんでやねんな部分」を話されたと思いますが、逆にコ学長の思う日本の魅力を教えていただきたいです。
まず前提として、僕は日本の悪口を言いたいんじゃなくて、日本の可能性を感じているからココがおかしいよって言ってますからね。
サコ学長
AYINA 土屋
うんうん、本を読んでて愛が伝わりますもん!
それで、日本の良いところをひとつ挙げると、受け入れる力があるところですね。
サコ学長
AYINA 土屋
受け入れる力ですか。もう少し具体的に教えて欲しいです。
例えば他の国だと、なにか新しいことが入ってくるときに、宗教への信仰が強かったりすると、違うものに対して拒絶する動きが出てくるんですよね。でも日本は「なんかわからんけども」という感じで批判をしながらも、とりあえず乗っちゃうところがあると思います。
サコ学長
AYINA 土屋
一見、自分がないように思えますが、サコさんには柔軟性があるように見えているんですね!
そう。最近の日本は変化の必要性をみんな感じてきていると思うのですが、そのときに新しい社会のシステムを取り入れやすい環境であると思います。
サコ学長
AYINA 原武
…なるほどです!
そういう社会の文化だからこそ、日本には外国の方々がいっぱい観光にくるんだと思うんですね。でも、ひとつ日本が誤解しているところがあるとも感じています。
サコ学長
AYINA 原武
それはなんですか?
外国人からみた日本の魅力が、表面的なものだと思っている人が多いと思います。実際に彼らがみたい日本はもっと深いところなんですよね。例えばロンリープラネットに出てる熊野古道※は外国人にとっても人気です。
サコ学長

※ロンリープラネット「Best in travel 2018」に選出

AYINA 土屋
へー、そうなんですね!
でもほとんどの日本人はそれを語らない、語れないんですよね。
サコ学長

日本の教育は恵まれているがもったいない!

AYINA 土屋
なるほどー。ちなみに、原武も聞きたかったと思うのですが、日本の教育面でいいなと思うところはありますか?
私は日本の子どもは恵まれていると思いますよ。先生がここまで時間を費やして子どもたちを教えているという社会は実はなかなか無いんです。
サコ学長
AYINA 土屋
ほうほう?
フランスをみてみると、しょっちゅう先生がストライキをして、「今日はストライキだから授業はなし」みたいなことが起こるんです。でも、30年くらい住んでいて僕は日本で一度もみたことがないんですよ。
サコ学長
AYINA 土屋
おーそういうことですか。日本はたしか法律か何かで禁止されてもいますしね。
はい、でも私学(私立の学校)でもやらないですよね。だから、教えることをこんなにあきらめない教員がいるのは日本くらいだと思いますよ。
サコ学長
AYINA 土屋
うおー!感動して泣きそう!

(すぐ涙腺が崩壊しかける土屋)

ただ、せっかく諦めないのにもったいないのは、教育を型にはめこみすぎてしまって、本来は100人生徒がいれば100通りの教え方があるはずなのに、ひとつのやり方で教えようとしてしまってズレが生じてしまっているところなんですよね。
サコ学長
AYINA 土屋
たしかにそこは難しいところですよねー。いやーマリで生まれてフランスや中国の教育など、複数のケースを体験されたサコさんならではの意見で、とっても参考になりました!

迷惑をかけることは悪いことではない

AYINA 土屋
生徒さんの話を聞く姿勢を24時間オープンにしつつ彼らを"雑"(フレンドリー)に扱い、でも提出物の〆切には厳しく対処する、という絶妙なバランスをとられていると本にありました。

私も感じるのですが、本に書かれていたように、日本人にはこのバランスが時に理解されにくいと思っています。

似ているようで異なる「自分を大事に」「自分に甘い」の違いと、反対の意味に見える「迷惑をかけても良い」「他人を大事にする」の違いとを、日本人にも分かるような例でもう少し教えていただきたいです。

日本人は場を見極めるのがあまり得意でないように思えます。冗談が言い合えるような仲になったら、どんな場面でもそれを期待してしまいますが、僕はやはり場によって変える必要があると思います。
サコ学長
AYINA 土屋
TPOをわきまえるってことですね。
はい。例えば私の研究室でみんなとケーキ食べてお茶しているときのサコと、奨学金の件で面談に来たときのサコと、同じサコを期待しているんですよね。そして、親しい学生ほど、真剣な面談で泣いちゃう子が多いんです。
サコ学長
AYINA 土屋
きっとギャップにびっくりしちゃうんでしょうね。
僕がよく先生たちにいっていることなんですけど、「学生のために」と言って、なんでもかんでも甘く対応しているだけで、先生が学生をダシにつかっていることが多いんですよね。
サコ学長
AYINA 土屋
なるほど…
本当に学生のためになることは、「正しいことを言うこと」だと思います。時にはその発言が生徒にとって痛いことかもしれない、聞きたくないことかもしれない。それでも正しいことなら生徒のために言う必要があるんですよね。
サコ学長
AYINA 土屋
それこそ愛がないと出来ないですよね。
一方で、「迷惑をかける」という部分の話になりますが、学生が勉強疲れとかで甘えたいという場合ならば、「迷惑をかけたくない」という考えは気にしなくていいと思っています。
サコ学長
AYINA 土屋
ふむふむ。もう少し詳しく聞いてもいいですか?
例えば、ストレスを解消したければうちに来てご飯を食べてもいいし、集中して勉強できる環境が必要なら、家のつかってない書斎を貸すこともあります。
サコ学長
AYINA 土屋
優しいサコさんの一面ですね。
本当に自分に必要だと思うことに対しては、迷惑をかけることを最初に考えてはいけないと思います。迷惑をかけないようにするというのは、同時に「恩をつくれない」ということなんですよね。
サコ学長
AYINA 土屋
あーーーー!(納得の声)
こうしてお互いに恩をつくるということをしておけば、例えば次に私が「家の大掃除を一緒にしよう!その代わりその後は家でパーティーしてもいいよ!」と、生徒にお願いすることができます。

これによって恩を返せるし、お互いに嬉しいという状況が生まれると思うんです。だから、お互いに迷惑を掛け合うことが相互扶助につながるんじゃないかなと思います。

サコ学長
AYINA 土屋
なるほど。迷惑をかけることが日本ではネガティブな意味でしか捉えられていなかったですが、より深い関係になるために必要なステップと言えますね!とても腑に落ちました!

以前からの友達とあたらしい友達を置き換えない

AYINA 山本
迷惑の話に関連して、グレン文化※についての質問です。学校内での生活を、自分にみえている世界のすべてに思ってしまう人とか、学校での人間関係ではうまく自分が出せないのに、そこ以外のコミュニティを持っていない人も多くいると思うのですが、そういった人たちはどうしたらいいと思いますか?

※グレン文化について(「アフリカ出身サコ学長、日本を語る)より)
出会い・娯楽・交流の場であり、同世代の若者が集まる場所。一番大事なことはケンカして仲直りができること。お互いに「これは迷惑だろう」と承知した上で迷惑をかけ、迷惑を認め合う、迷惑をかけてなんぼの世界である。遠慮がないからこそ、損得勘定のない、無償の関係がつくれる。

たとえば幼なじみという言葉がありますが、ほとんどの場合幼なじみと今でも親交がある人が少ないですよね。グレン文化は一度つながったら今でもずっと繋がってるんです。

学生の話を聞いていると、大学に入ったときに、地元の友達とかこれまでの友達とかと会わなくなって、あたらしい友達と置き換えちゃうんですよね。

サコ学長
AYINA 土屋
上書き保存だ!
そう。決して共存しようとしないんですよね。例えば私は友達を混ぜることをよくします。家でパーティーするときに、学生の友達とカフェで知り合った友達とを勝手に混ぜてみちゃう。
サコ学長
AYINA 土屋
私もそれ好きですー!
最初はみんな戸惑うんですが、面白いことに、別々だった私の友達同士が仲良くなって、私抜きで会ったりするようになるんですよね。
サコ学長
AYINA 土屋
わー!素敵―!
皆さん地元やこれまでの友達を切って大学にきちゃうから、大学の人間関係がうまくいかないと辛くなっちゃう。切らなければ、そこまで辛くない。

私は今でもマリの友達から急に電話がかかってきますよ。時差があるから日本の夜中にかかってきて、「サコ!元気か!」って。マリにも今でも仲良い友達いっぱいいるから「あなた誰やねん?」ってなることもありますけど。

サコ学長
AYINA 土屋
あはは!笑っちゃいましたけど、要するに新しい環境に行ったからとして、これまでの友達を切らずに大切にして、ときには今の友達と混ぜてみちゃうのがいいかもしれないですね。
そうです。昔の友達は、その頃の私を思い出させてくれる存在でもあるんですよね。例えば、「ふるさと」という言葉は場所ではなく、あの頃を思い出させてくれるものだと思います。古くからの友達を持ち続けることは、ふるさとを持っていることのようなものかもしれません。
サコ学長

 

本日はここまで!残りは後編でお届けいたします!お楽しみに!

後編はこちら↓
「3000円払ってウザい経験して作り笑顔の写真を撮る意味ある?」日本初アフリカ系学長サコ氏が語る日本の未来【後編】

(取材:土屋、山本、原武/記事:内藤/Zoom撮影:池田)

 

本を読んでもっと深く知ろう!

サコ学長は、この度ほぼ同時期に2冊の本を出版されました。今回の取材内容も、本をお読みいただくとより深く知ることができますので、ぜひこの機会に読んでみてください。

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10/4にオンライン出版イベント開催!!!

そしてこの度、サコ学長が本を2冊ご出版した記念といたしまして、AYINA主催でオンライン出版イベントを開催いたします!無料ですのでこの機会にぜひ生のサコ学長の声をお聞きいただければと思います!

画像をクリックすると参加ページに飛べます

  • 日時:2020年10月04日(日)18:00〜20:00
  • 場所:オンライン(zoom使用)
  • 参加費:無料
  • 使用言語:関西弁

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