AYINAの内藤です。
AYINAメンバーが日本に住むアフリカ出身者の方にお話を聞かせてもらう『アフ凸(トツ)』。すいません、今ノリでつけてしまいました。
とにかく、日本には16000人いるといわれている在日アフリカンの方にフォーカスを当て、その方の魅力、出身国のリアルなお話、日本に住んでみて実際の感想などを教えていただく企画となります。
「ジェノサイド(大虐殺)」という言葉を聞いたことはありますか?悲しい事実ですが、この言葉から連想されやすい国のひとつが東アフリカにあるルワンダという国です。
1994年に人口の10%が命を落としたとも言われている大虐殺が起こり、その後は「アフリカの奇跡」とも呼ばれる復興と、近年では「世界初の血液輸送のためのドローン空港」が出来るなど、近代的発展を遂げているルワンダで28年過ごしたのち、国際結婚を経て日本へ在住しているルワンダ人アーティストのオーガスティンさんにお話を伺ってきました!
※コロナの影響でオンライン取材となっております
【オーガスティン・ハキジマナ】1988年、ルワンダ共和国(キガリ市)生まれ。2010年、首都キガリ市キミフルラ地区に「ウブランガ・アート・スタジオ」を創設。アクリル絵の具による独自の色遣いが特徴。主にアフリカの風景、動物や人々の暮らしぶりを描く。⾃身がジェノサイドを生き延びたこともあり、アフリカの紛争や難民などのシーンも描く。こうした制作活動に加え、貧しい子どもたちに対して、アートセラピーを実施している。2011年、東アフリカ・ビエンナーレにおいて、ルワンダ人画家のベスト4に入選。
AYINAの土屋(右上)と2名のボランティアメンバーも参加
土屋
今日はありがとうございます!去年の8月振りですね!さっそくで申し訳ないんですが、髪型含めてめっちゃカッコいいですね!
ありがとう。一応アーティストだからね。君の背景のアフリカ布もいいよ!
オーガスティンさん
アフリカ布大好き芸人のAYINA土屋
7人兄妹の3番目の子供として生まれる
土屋
ありがとうございます♪まずはオーガスティンさんの生い立ちを知りたいのですが、どんなご家庭で生まれたんですか?
家族は両親と、3姉妹、4兄弟で、僕は上から3番目だったよ。
オーガスティンさん
土屋
さらっと言ってるけど7人兄妹ですか!ルワンダは発展速度がすごいので、今とはちがう状況だったと思いますが、家庭環境はいかがでしたか?
けっしてお金持ちではなかったかな。子供7人だから大変だよね。でも僕たちはベストを尽くしているし、家族を誇りに思っているよ。
オーガスティンさん
土屋
もう既にいい話(泣)オーガスティンさんとっても温かい雰囲気なんですけど、子どものときからおとなしかったんですか?
あー、たしかに小さい頃からいわゆるおとなしい方だったかもしれないなぁ。
オーガスティンさん
ワイルドに見えますが本当に優しい雰囲気のオーガスティンさん
6歳頃から絵を描き始め、バイト先で70ドルで絵が売れた
土屋
アーティストということで、ご両親が画家とかご家族の影響でそうなったのでしょうか?
いや、親は関係なくて、6〜7歳くらいのときから既にとってもいっぱい絵を描いていたんだよね。
オーガスティンさん
土屋
その頃からもう絵が好きだったんですね〜。本格的にアーティストを目指すようになったきっかけってあったんですか?
高校を卒業したあとに働いていたアメリカ人が経営するバー&レストランに絵を置くスペースがあって、そこでアーティストさんに出会ったんだ。絵が好きだったから自由時間にスケッチを描いていたら「絵が上手だね!アーティストになれるよ!」と言ってもらった。それで小さな絵を描いたら、70ドルで売れたんだよ。
オーガスティンさん
土屋
すごい!調べた情報ですが、今でも首都キガリの平均月収が2万円といわれてるので、70ドルは大金ですね!
そうなんだ。そこではじめて自分の絵に価値があることがわかった。
オーガスティンさん
土屋
そうだね。次の年にはレストランの仕事を辞めて、アーティストになった。実は、高校の友達のほとんどが今有名な歌手で、そういう環境にいたこともあり歌手を目指していたんだけれど、レストラン&バーの仕事の時間帯と、練習やライブの時間等の折り合いがつかなかったんだよね。
オーガスティンさん
土屋
一方で絵はいつでも描けるし、何より好きで出来るってこともあって、絵のアーティストになることにした。元々、自分のメッセージを伝えたくて、どんな形であれアーティストになりたかったから。
オーガスティンさん
アーティストのことを語り出すと真剣な表情に変わりました
女性の絵が多いのは母へのリスペクト
土屋
描かれている絵の内容について聞きたいです!主にどんな絵を描いてるんですか?
基本的に、自分の身の回りに起きたことや、囲まれているものにインスパイアされて描くことが多いかな。
オーガスティンさん
土屋
おや?ちょっと待ってください!オーガスティンさん、さっきから後ろにチラチラみえてるのは絵じゃないですか?
オーガスティンさん
部屋一面に飾られている絵
土屋
お部屋がスタジオですね!事前に調べていた通り、女性の絵が多い気がしました!
そうだね、特にアフリカの女性にフォーカスすることが多くて、根本でいうと、何かと被害者になることが多いのは女性だし、ママの大変さを知っているから、彼女たちの価値や彼女たちへの感謝やリスペクトを示したいと思っているよ。
オーガスティンさん
土屋
す、素敵な話〜!私もママは世界で一番尊いもののひとつと思っているので、共感します!
※土屋はすぐに感動して泣きます
コロナのような時代を予言していた?!
土屋
もうひとつ気になる絵があるんですが、そのマスクをしている絵はコロナが流行してから描いたものですか?
日本の街の上空にマスクをした男性がいる絵を発見
いや、これは2016年にはじめて日本にきたときにフッとインスピレーションが湧いて、2017年に“世界中でマスクをする日が来る”と思って描いたんだよね。
オーガスティンさん
土屋
なんか暗い雰囲気の感じとか、まさに今を描いている(2020年4月中旬)のかと思っちゃいました。
ウイルスというイメージよりかは、中国も急激な発展などにより大気汚染が激しくてマスクをしていたし、テクノロジーとか経済発展とかによって自然が急速に無くなっている感じがして、それが世界に広まっていくような気がしてこの絵を描いたんだよね。
オーガスティンさん
土屋
あまりに偶然が一致しすぎて困惑する土屋
土屋
この絵は珍しく暗めですが、基本オーガスティンさんの絵は明るい色を用いたものが多いですよね!
厳しい状況に置かれていても、希望を持ち続けられるように、と明るい色やアフリカ布を用いることが多いね。ハクナマタタ(心配ないさ!)の精神さ
オーガスティンさん
土屋
私のケニアの友人は、「ハクナマタタは“自分が出来る範囲のことに全力を尽くせば、結果はついてくるから届かない範囲のことを心配し過ぎる必要はない”という哲学だ」と持論を教えてくれました。私が好きなアフリカの美しさ・強さの秘訣のひとつだなあと。
ルワンダでのアートセラピーという活動について
土屋
それから、ルワンダでアートセラピーをなさっていたとのことですが。
そう。絵は技術的なものも大事なんだけれど、一番大事なのは心。"Express yourself(あなた自身を表現して)"と伝えていたんだ。絵からその人の生き方や考え方が分かるからね。どんな色を使うか、どのくらい時間を掛けるか、とか生き方が出る。ぼくはそれによって参加者の心を読むんだ。
オーガスティンさん
土屋
深い〜!そこまでわかるんですね!私も吹奏楽でサックスやってるんですけど、絵は描けなくて笑 でも、表現することが優先なら絵への抵抗が小さくなってきました!
そうそう、競う訳じゃないんだし、芸術の下ではみんな自由さ。アートセラピーやワークショップを通じて参加者と絵でお互いに対話出来る。彼らから学ぶこともあって、”子供も先生”なんだ。
オーガスティンさん
ルワンダでのアートセラピーについて語ると笑顔になりました
正座が辛く、お祭りが楽しい!
土屋
2016年から国際結婚で日本に住まれたとのことですが、驚いたことはありますか?
日本の文化は相手がなにを考えているかを感じないといけなかったりするよね。そこを推測するのが結構外国人として難しいかな。
オーガスティンさん
土屋
それは日本人の私でも苦手なので、大丈夫(?)ですよ!
あと茶道の儀式に参加したことがあるんだけど、正座が辛かった。
オーガスティンさん
土屋
あー正座!小さい頃からしてなかったら辛いだろうなー。逆に良いなって思った文化はありますか?
お祭りだね!日本のオリジナリティを感じるし、エリアによっても違ったりするからとっても面白いよ! さっき驚いたことを伝えたけど、文化について文句を言うことはないよ。幸せに生きる方法のようなものでしょう?違うだけ。
オーガスティンさん
土屋
本当にその通りですよね!みんな違ってみんな良い!ところで、日本のお友達はできましたか?
うん、アルバイトでスポーツクラブのレストランでバーテンダーとかウェイターもやっているから、たくさんいるよ。居酒屋に行って出会うこともある。
オーガスティンさん
土屋
出て行って友達を作るの、積極的で良いですね!今度一緒に呑みましょう! 外国の方のご友人はいますか?
アフリカンの友達が多いね。DRC(コンゴ民主共和国)とか、タンザニア出身の人もいる。
オーガスティンさん
土屋
えー!いいなー!その人たちと居酒屋行くときも連れて行ってください!
オーガスティンさんより積極的な土屋
日本で受けた差別の経験
土屋
あるよ。友達と呑んでたら2人の老人がきて、何か言って最後に1000円くれたんだ。僕は断ったんだけど。多分アフリカ人=貧困と思われたのかな?ちょっと見下されてる感じがしたかな。
オーガスティンさん
土屋
たしかに知らない人がいきなりお金を渡すのは変かもしれないですね。私は喜んで頂戴してしまうと思うけれど(苦笑)、友達としてならまだしも見下してる感はちょっと…
あとは、子どもがいるんだけど、保育園に迎えにいくときに同じ保育園の子どもたちに「キモい」とか「なんで黒いの〜?」と言われるね。でも、子どもは興味津々なだけだし、親から学ぶから、僕は怒らないかな。奥さんは怒ってるけどね。
オーガスティンさん
土屋
ううう。我々はこういった差別や偏見をなくすことが大きな目的なので、聞いていて辛いですが、失くしてみせます!
オーガスティンさん
日本でもワークショップなどを開催
土屋
日本ではどんなアーティスト活動をしているんですか?
ワークショップとかだね。子供だけでなく大人向け、企業や団体とかも対象に横浜で2回、東京で3回はしたね。あとは個展を開いたり、イベントで絵を売ったりとかはしてきたよ。
オーガスティンさん
日本でも作品の販売などをされています
土屋
日本人の方も買ってくれるけど、欧米の方が多いかなー?日本の人はポストカードとかコンパクトなタイプを好むかな。
オーガスティンさん
夢は日本に自身のギャラリーをつくること
土屋
最後になります!今後のアーティストとして活動や夢を教えてください!
自分の作品を見てもらえるギャラリーのような場所をつくりたいね。個展はやったけど1週間だけだったし、できれば常にみせられる場を。僕にとってのアートとはなにかを多くの人たちにみせたいんだ。“アフリカ人だから”サポートしたい、ではなくね。
オーガスティンさん
土屋
うわー!そのギャラリー行きたい!ぜひ実現させましょう!
ルワンダ人アーティストのオーガスティンさんのホームページはこちら↓
https://www.rwandan-art.com/ja/
取材後手記
アートを語るオーガスティンさんは子どものようにキラキラしていて、本当に心から絵を描くこと、つまり自分を表現することが好きなんだなぁと思いました。
ジェノサイドを実際に経験したからなのか、ネガティブな質問に答えていただく際も、お話の着地は常にポジティブな表現になっていて、きっと彼の夢でもある「日本にギャラリーを持つ」という目標は叶うと思いましたし、そこで笑顔になっている子どもや大人、そしてオーガスティンさんの顔が浮かんできました。
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〈取材・文=土屋みなみ(@TsuchiyaMinami)/構成=内藤獅友 /撮影=岡﨑 智郎〉